もその一人であったと思われる。
 只一眼その姿を見てそそられる様な清い愛情の湧く姿も声も神からさずからなかった。
 誰れにも似て居ない赤坊を見た時二親なり同胞のものが変な感じにおそわれるのは自然な事である。
 生れた児には何のつみもない。只不幸な偶然な出来事に会ったと云うよりほか仕方がない。その不幸なる思いがけない出来事によって直接その児が同胞達からいい気持をされなかったと云う事は実にくらべるものない惨めな事である。
 よく人は容貌によって愛す愛さないと云う事はないと云うけれ共、一目見て不愉快な感じをあたえる顔をしたものをこの上なく愛すと云う事は人にまれな美徳なり技術なりがその醜さを被うて居る時ででもなければ大抵は出来ないものである。
 まして何の色彩もない自己を装う事をしらない子供はありのままの自分をいつでも誰にでもさらけ出す。
 子供特有の無邪気さはあってもそれをよけい美くしくする麗わしい容貌がいるものである。たしかに私はそれを信じて居る。
 子供と云うものが従来最も神に近いものとしてあっただけ子供と云えば美くしく想像する。極く育とう、育とうとする子供の時代は万事の事がいかにも人間
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