彼女たち・そしてわたしたち
――ロマン・ロランの女性――
宮本百合子
わたしは、もう久しい間、いつかはそのような仕事もしてみたいと思っている一つのたのしみがある。それは、ロマン・ロランによって描かれている魅力のふかい多勢の女性たちについて、こまかくよみくらべ、おどろくような多様さでいのちづけられている彼女たちの存在の意味をこんにちの歴史の中で明瞭にしてみたいという考えである。
一九一七年に、そのころ後藤末雄氏によって訳された「ジャン・クリストフ」(国民文庫刊行会版)を読んだときの感銘。それから「魅せられたる魂」の英訳がはいって来て「アンネットとシルヴィ」「夏」「母と子」と一冊一冊おぼつかなくよみすすんで行ったころの感銘。ロマン・ロランの芸術の世界で男は何と男らしく、女は何と女らしく、互の関係の中でいきいきとした人間像を浮き出させているだろう。世界文学は、感銘ふかい女性をいくたりも描いている。とりわけフランスの文学は、歴史のそれぞれの時代に女性の生きた姿をまざまざと芸術のうちにとらえて来ているし、婦人作家自身、どの国よりもゆたかに真実の女性を描き出しても来ている。けれども、ロマン・
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