反宗教運動とは?
――質問に答えて――
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九三一年十月〕
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 宗教が何処の国でも、その支配階級の道具として使われていることは、難かしい色々の理屈をいわないでも、吾々の日常生活の中にはっきり現れていると思います。
 この間も、ラジオの昼間放送を聞いていたら、何処かの偉い坊さんが喋っている。どういうことを云っているかと聞いてみると、「金持が妾をおいたり、別荘をもったり贅沢三昧をしているのは、魂の安住と云うことを知らぬ哀れなことだ。それを皆さんが羨やんだり憎んだりするのはまちがいで、貧しい者こそ心がけ一つで魂の安住が得られるのだ。だから、昨今のように世の中が険しくなって、社会主義だのプロレタリア解放運動だのやかましい時代に生きる吾々としては、自分の貧しさを魂の安住の方便として仏が与えてくれたものと考え、宜しく仏の加護を信じて魂の平安を期さなければならない。」
 ところで、若し、あなたが俸給生活者であり、又は工場労働者で、毎日職場でブルジョア産業合理化による
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