首きりの不安と、安い労働賃銀の苦しみにさらされている時、この説法をきいて成程、とどうして思うことが出来るでしょう。現代反動政府とそれを支配しているブルジョアとは、あらゆる機会に坊さん、いわゆる道徳家牧師を動員して世界経済恐慌によって起るプロレタリアの攻勢を何とかして胡麻化そうと、かかっているのです。反宗教運動は、プロレタリア文化運動の一翼として、当然起ってくる活動です。
 吾々の日常生活を脅やかしている敵は何者か。それは、世界の資本家、資本主義的社会組織だと知った時には、宗教も亦、敵の武器として日夜大衆にむかって目に見えぬ催涙弾の働きをしていることを理解せずにはいられません。
 日本における反宗教運動はまだ新しい。従って技術的にまだ幾らかの不備な点もあることはありますが、プロレタリア解放運動の一面に反宗教運動は、必然的に起る文化活動です。
 現代の矛盾だらけな、苦しい社会に生きる吾々は、苦痛そのものの原因を取り去ってくれるものを見つけそれを信じ、そのために働かなければなりません。資本主義社会の被搾取階級が苦しんでいる苦しみから、具体的に経済的に解放してくれるものは、線香の煙で黒光りにな
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