は、性格にそのような動揺する暗さ明るさをもったインテリゲンチアの一団がその青年期のあるときにいろいろの矛盾を背負ったまま階級的移行をしたのは、歴史的にどのような必然によるものであったのか。そして、それから十年にわたる彼らの活動は、どんな歴史的特色をもっていたが故に、今日の困難な情勢の下に彼らが挫折しなければならないように、その内的矛盾を激化したのか。
そのいきさつが知りたいのである。ヨーロッパにくらべると二十年余もおくれてイデオロギー的に大衆化するや直に複雑多岐な暴力にさらされなければならなくなった日本の若いマルクス主義の活動家たちと、転向の問題とは骨肉的な関係で結ばれていると思う。運動が合法的擡頭をした時代に階級的移行をしたインテリゲンチアが、文学上の名声という特殊性もあってまだ十分自分らを階級人としてこね直しきらないうちに、情勢の方はさきまわりして客観的にはそれらの人々がすでに一つ前の時代のタイプとなり、その破綻が転向という形態で、今日現わされてきている。
従って、問題はいわゆる転向したプロレタリア作家たちの良心の上にだけかかっているのではない。われわれみんなの上に、大衆の上に
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