)」の注記]う波が、白い水泡《みなわ》をのこしては引いて行く様子は必[#「必」に「(ママ)」の注記]して悪いはずもない。
江の島があるばっかりに、ここいらの品がすっかり落ちて仕舞った、惜しい事だ。
そうかと云って又、江の島があればこそ、私達の様なものまで、わざわざ時間をかけて来るのでもある。
江の島の弁天様が、おいであそばさなかったら、ここへ、よし来は来ても、御飯をたべる処もない事を思えば、まんざらそう、けなしもならないわけである。
潮加減か、波のすぐ下に、背の青い小魚がむれて、のんきそうに、ゆーらり、ゆーらりとゆれて居る。
棧橋の上に、それをねらった二三の漁師が、「あみ」を手にもって、ニヤツキながらそれを上から見下して居る。早く、どっかへ行けばいいにと思って私はその漁師とならんで、その青い小魚の群に気をとられるのである。一体冬の海は、春の海、夏の海にくらべて、厳かな感じをあたえるものである。
冬は、小田原の海が見物だと思う。
もう、ゆだんのならない大波が立って、汀から、八九尺の上まで飛びあがってから、投げつけられた様に、砂の上にくずれ落ちる。
したがってその音も、とう
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