い弾圧だ。若い婦人が大部分を占める聴衆は坐席から立ち上りはしたが動こうとはしない。警官がそれを邪険に追い立てて散らしている。
「働く婦人の夕べ」準備委員会はすぐ抗議団として、弁護士布施辰治、司会者等を築地署へ抗議のために送った。高等主任に会い、折から居合わせた警視庁の高等係とも掛け合ったが、彼等は何と卑劣でしょう。自分等が一旦法律に従って許可した余興だけさえ、もう許可はとり消したのだといってやらせない。段々夜の部がはじまる午後六時近くなると、会場築地小劇場のまわりから附近の街角まで巡査が溢れ、よろこび勇んで「働く婦人の夕べ」へとやって来る熱心な若い婦人たちを、一人一人追いかえし始めた。それをくぐって劇場の前へかたまった三十人ばかりの婦人たちは、何とかしてこの待ちに待ったわたしら「働く婦人の夕べ」を闘いとろう、警察へデモをやろう、と代表を選んで提議して来たほどです。
 婦人大衆の支持はこんなにまである「働く婦人の夕べ」を、官憲は何故めちゃめちゃに弾圧するのでしょう? その理由は、われわれにとって面白くためになる『働く婦人』が毎号発禁になると全く同じです。「働く婦人の夕べ」こそ本当に働く婦
前へ 次へ
全8ページ中4ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング