小説が数年前朝日新聞へ続載不可能となったことがあった、それについて芸術家同士らしく語ったであろうか?
 宮城道雄氏は、彼の琴に対して、謂わば必死の芸術的態度を持しているひとであろうと感じられる。いつの間にやら、その自分の芸術が形なき日本のトゥリスト・ビューロウの定例的余興番組に入れられていたとしたら、彼の熱心は果して如何に感じるであろうか。痛ましくも興味あることに思うのである。

 やはり、オリンピックに関してであるが、女学生のサインを求める傾向について、要路お歴々の座談記事がのったことがあった。オリンピックで東京へ来た各国選手にのぼせて、サインを強要したり、恋愛事件をおこしたりしては国の恥であるから、そういう怪《け》しからん娘は断然取締るべしという方針に立っての談話なのであった。けれども、恥の考えようもおのずから深浅ありと云おうか。私共には、前司法大臣が破廉恥罪で下獄すると報道されている同日の新聞に、前鉄相が五万円の収賄で召喚されることを読む方が、恥といえば何か恥に近いものがあると感じられるのである。
 外国人の男に対して、日本の女が概して無防禦であり、惚れっぽいということについて、
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