であったが、〔七字伏字〕向いあった側に〔二字伏字〕、そこは男ばかり〔九字伏字〕が並んでいる。男等は〔六字伏字〕十八人から二十三四人も〔五字伏字〕いたから誰も〔十七字伏字〕。高いところの金網ばりの窓に朝の清げな光があるが、其〔三字伏字〕の内は〔七字伏字〕人いきれと影とでどす暗く澱んで、〔二十三字伏字〕蒼い髪の伸びた男の顔と体とが〔五字伏字〕見えるのである。
女の方は幾分明るく、〔九字伏字〕、〔十五字伏字〕あったが、朝のその刻限には、毎日きまってホーホケキョ、ケキョケキョと明晰な丸い響で高い窓から鶯の声が落ちて来るのであった。鶯の音のする方からは、夕方揚げものをする油の芳ばしい匂いも流れて来た。その匂いを深く鼻の穴に吸いこんで嗅ぐと、半歳近く湯にいれられぬ皮膚が、ほのかにうるおい、食慾も出るように感じるのであった。
商売
帳簿を立て並べた長い台に向って、土間に、白キャラコの覆いのよごれた粗末な腰かけが三四脚おいてある。薄禿げで、口のまわりに大きい皺のある小柄な主人が縞の着物に黒ラシャ前垂をかけ、台に坐り筆で何か書いている。主人の背後には、差入れをたのまれた書籍類が数冊ずつ細い
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