谷まですぐ省線で来たが、エビスのところで、べこがお文公に小さい声で訊くことには、
「おフーちゃん。家までつめたいもの飲まずにかえれるか」
「ダメ」
「では――うまい! 又ミツ豆へ行こうではないか」
どう? 淋しかったし、つけ元気で、道玄坂の長唄氷まで出かけたという有様です。そこで水瓜をたべ、引茶氷というの、お文公の発起でとったが、この引茶は不味。半分もたべなかった。それから角の本やによって、第一書房のをとって、来月の『アララギ』を一冊とらせる注文をして、玉川電車にのりました。暑く、汗が出る、出る。水瓜の汗故、サラサラ流れる。家へついたのは十時半すぎでした。
風呂へ入って、お文ちゃん先へ床につき、自分蚊帖の外へスタンドを引よせ――妙ね、独りになると、皆あれをするのね――ぼんやり、奇麗な蚊帳を見ながら、長く、長く起きて居た。鼠がひどくあばれる。……
ねえ、もやーさん。今度もやーさん出かけてよかった。昨夜出かけてよかった。私も送りに出かけて行ってよかった。昨夜帰って来てから、心持が大分なおって、元気が出たのを感じました。それに、こんどはまるで一人でないから、やはりそれ丈助り、Bed に
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