横わり乍ら、汽車の窓から頭を出し、扇を振って居たもやーの水色の肩を思い浮べても、苦しい程にはならず懐しく、みーらやで、しんみりした心持です。すべて――スタンドの灯で見る蚊帳も、その白さも、柔らかさも、空《カラ》な隣の部屋の歩き心地も、新鮮な感覚でした。一緒に苦楽園へ汗かきに行くより心理的にずっと有効でした。だから、もやーさん、どうぞ御安心。
今日はこれから竹中さんへ上げる随筆をかきます。その位のもの書くに最も適した心持で居る。
斯ういう紙に書くと、巻紙より沢山かくわけね。若しこれが巻紙であったら、もう長い、長い。もやーさん片手で一杯握り切れない位かもしれません。明日、ヴヴノワさんのところへ一寸行くつもりです。それから、若しまだその気があれば Sitting します。
道玄坂の花やで 虎の尾 を買って来た。日本風な名でしょう、ところが花は西洋くさい花です。
[#地から2字上げ]べこ
もやあさん
ポンプ、けさもべこが寝て居るうち、出ない出ないとフーちゃん、貞ベエ、話して居た。――今は出るけれども、水倹約の布告を出しました、今日。
〔欄外に〕
○デーニギ
電報が来るまで待って
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