娘さんがなくなったと云う知らせをうけた、阿母さんが死んで年の順に二人までまだ処女で居る女達の死んだと云う事には伝説のうんだ現実と云う様な事が思われた。松野の夫は消極的な運命のなすがままに自分の一生をまかせて居る様な男だった。「青い鳥」はまだ上編だけれ共口に云われない神秘が心の中に入って行く。
一月五日(月曜)晴 暖
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〔摘要〕銀座行、『美術と文学』、『三田文学』、七面鳥を買う
古橋氏来訪、宍倉母親娘
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道男、本田道ちゃん[#本田道之、父精一郎の従弟]と行く。何となし絶えない私のあこがれのただよって居るこの町を男の様にシュッシュッと歩きながらこの町にふさわしい女にたった一人でも会いたいと思って居た。帰りに電車にのる一寸前、真綿に包んでしまって置きたいほどの女房に会った。うす青のコートにこくつけた白粉顔の頬ははにかんだ様に赤くなって居た。大形の丸髷の赤手がらは口にも云えず思い出してさえ身ぶるいが出るほどだった。赤と黒と並んで二本緒のすがったコロップの下駄をはいて小きざみに内輪にせいて歩いて居た。今でも私の目
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