れる。考える事は私に取ってまことにたのしいものだけれ共悪に種を得てどうでも斯うでも考えなければならないとなると私はしずんだ重い気持になる。
まるで雪の様に散って私の心にうかんで来るいろいろの思いは私の一つ一つがんみしてよろこぶだけのねうちがある。
○二月十二日(木曜)晴 寒
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〔摘要〕学校出席、大当番
電車の中にて古橋氏に会う。
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消えのこってかたすみに泥まみれになってかじかんで居る雪のかたまりはたとえるものもないほどみっともないものである。
「千世子」を書き始めた。
何事によらずやむを得ず習練させられて巧になったと云うものはまことにそれ自身にとってはかなしいひやっこい気持がするものである。
私は練習されないありのままの感情を貴ぶと共に、一寸でも自分の心に練習された感情の生れて居るのを見出した時はたまらなくかなしくなる。この頃の時代は私にとってある一種ことなった殊に記憶すべき日常である。悪い意味でなく。――
○二月十三日(金曜)晴 寒
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〔摘要〕学校出
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