「死ぬ」と云う事がたまらなく恐ろしい又たまらなくきれいにこの頃は思われる。私の年頃私の境遇は死と云うものを或る一種なドラマティックなものとして見る時代になって居る。
一月十八日(日曜)曇雨 暖
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〔摘要〕父上晩餐によばれる
小針が来る
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何となくもの足りない一日だった。何かしら空[#「空」に「(ママ)」の注記]まちにまたれた。
じいっとしずかに座って枯れた木の梢を見ながら私のまわりに近よったり近づかなくなったりした人の顔や声やくせなんかを思い出した。一寸した出来心でなる女同志の友達なんてそんなに意味深くなりにくいものだとも思われた。
しとしととふり出した雨の音はなつかしかったけれ共じきにはれて星が美しくなって居た。道が悪くなくていいかもしれないけど今の気持にはあんまりそぐわない。
気まぐれの小雨の音の我耳をなで行きしあとのもの足らぬ心地。
一月十九日(月曜)晴 暖
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〔摘要〕学校出席
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しゞまなる夜に小まりのはれ/″\と
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