席、日誌当番
燈台守の娘の話を翻訳
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○希望は心の生命であると云う事はだれでもが云うけれ共私はこの頃特別にそう思う。悲しい中にも自分の心の希望が輝いた時にはまことにうれしいものだ。
○今までになく私は確定した考えをこの頃は少し持って居る。それを私はよろこばなければいけない。
○よろこびの根強く生えて悲しみはいずこの隅に身をばひそめし
○かなし味のかげにうち笑むうれしさは
真珠のごとく貴くもあるかな
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二月十四日(土曜)晴 寒
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〔摘要〕学校出席 大沢氏
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二月十五日(日曜)晴
Ancient Greek Sculptors 訳し始める。勿論一年仕事であるけれ共その結果を思えば努力しがいが有る。
二月十六日(月曜)
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〔摘要〕学校出席
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久米正雄氏から『新思潮』を送って呉れる。
二月十九日(木曜)
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〔摘要〕学校出席
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『太古美術の瞥見』を訳終(第一)
二月二十二日(日曜)
第二、ギリシア寺院、及び男女神訳終。
二月二十三日(月曜)
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〔摘要〕学校欠席
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二月二十四日(火曜)
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〔摘要〕学校欠席
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二月二十五日(水曜)
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〔摘要〕学校出席、
美音会、母上、岡田信一郎に会う、
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久し振に美音会に行く。新内は上手下手が分らず。琴は又同じ。大薩の五條橋はばちのさえをおどろき呂昇は身振のひどくなったのと声のすまないのでああ云う程の芸人の末路は暗いものに思われた。竹田人形は一番私の心にかなった。極ク単純なそして又ごくクラシックなおもかげをもって居る。着衣の立派でないのも色のあせた赤げっともふさわしいものだった。
岡田さんに会って食堂でお茶をのむ。頭にきざみこまれる様な様子の人は男でも女でも只一人も居なかった。
二月二十六日(木曜)晴 寒
二月二十七日(金曜)
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〔摘要〕学校出席、音楽試験
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二月二十八日(土曜)晴 寒
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〔摘要〕同級会、小さくてかわいい花束をもらう 古橋氏
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竹島先生の話の中で、
生をあたえた神が又死をあたえると云うのは神の大なる矛盾だと思う、
慾望の変遷は尊いなくてはならないものだ。
なんかと云う事があった。
竹島先生は意味なく只死をおそれて居るらしい口振である。一言きけばいまわしい死の事もしずまったおだやかな気持で学問らしく考えれば面白い。そんなに悲歎する様なものではない事を私はしって居る。
三月一日(日曜)晴 暖
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〔摘要〕母上小金井
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珍らしい人達は母様の留守をねらっての様に沢山来た。そうして私のし様《よう》とした事はその人達によってぶちこわされてしまった。一日中いらいらしたそうしてかなしい気持でばっかりくらしてしまった。思い出と名づけていいものは私をひしひしととりかこんで来て居た。今私のして居る仕事が八月末には出来上る事なんかも考えた。わけもなくいろんな事が思われた。
収穫漸減
三月三日(火曜)
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〔摘要〕木曜作法試験
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三月四日(水曜)
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〔摘要〕金曜文法
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三月十五日(日曜)
国男京華入学試験同じ日だのにお茶の水でもあった。
三月十六日(月曜)晴、寒
あきあきするほどの長雨が漸《ようや》くはれて霜が降って居た。
三月二十五日(水曜)
お敬ちゃんが来る。新お召の矢がすりの羽着[#「羽着」に「(ママ)」の注記]に銘仙のあさぎっぽい着物を着て来た。
『演芸画報』をかし孔雀の刺とりの額をやる。
三月二十七日(金曜)不定 寒
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〔摘要〕京北試験国男四番にて及第、大正博行
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グースベリーの熟れる頃を書く。
三月二十八日(土曜)
小さい論説
繊細な美の観賞と云う事について
三月三十日(月曜)
Wo
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