きって図学[#「学」に「(ママ)」の注記]紙をはりつけて下に敷いた。
 水色のところにうき出したように見えてきれいだ。
 私はこの上で書くものとつり合った、きれいな気持できれいな字で書かなくっちゃあいけないようなきがした、あしたかあさって図書館にやっていただこうと思う。読む本の番号や何んかをうつして来ておかなくっちゃふつごうだと思ったのでいつでも持って行くノートにそれに都合のいいような条をひいて置いた。はじめの方は丁ねいに、あとから面倒になったんですこしきたなくなってしまったけれども誰が見るもんでもないからと思ってまに合わして置く。
 夕方は何にもする事がなかったもんでもう忘れかけて居るような古いうたをうたったり、「古今集」からすきなうたを書きぬいたりした。夜、御となりで御琴と三味線合奏をはじめられた、楽器の音はうれしかったけれども三味せんのベコベコとうた声の調子ぱずれには少しなさけなかった。

 七月二十九日
 やたらに旅に出て見たい日だった、ただどっか歩きまわって見たくって何にも手につかないほど……
 私は朝めがさめると一緒に旅に出て見たい事と思った。私は坐ってジッとして居ると目の
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