し」
とことわると
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「御前なんか、一日中机にかじりついていたってろくな事は出来るはずがないんだから働いた方がましだ」
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と云われたけれども口惜しいような、一日中机にかじりついてれば立派なことができるように思われたんで机の前にまいもどった。
 数学は今まで毎日して来たから今日は休んで、英語と歴史とをさらう。
力抜山気被世 時不利
 の詩をいつもよりしみじみとくり返してよんで居たら段々声が大きくなってしまったんで
「それこそほんとうのじゃじゃだ」
と云われたんでびっくりしてゆるんだ口元をたてなおすひまもなくつづけざまに笑われたんでやたらどなってしまった、あとで自分も吹き出すほど御かしい。
 それからようやっと落ついてから、こないだのもののつづきを書き「聖書」と「希臘《ギリシャ》神話」を読む。「聖書」なんかは信心しない私なんかには別に有がたいとは感じないけれども「聖書」は一通り知って居なくっては不自由をしますよ、と忠告されたんで先によんだつづきから又よみ始めて居るわけである。
「希臘神話」はいつ見ても面白いものだと思う。本をよみながら一寸首をあ
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