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と年よりのような声を出して心配して居た。電報が来て「父[#中條精一郎]があすの朝の八時につく」としらせて来たんで、必要のところへはみんな電話をかけて知らせて置いた。
電話室がうすくらいので蚊に足をくわれるしとりつぎに出た人達がみんなはっきりわからないんで業をにやしたりして四十分も立たされてしまった。
むし歯がすこしいたみ出して眉の上のところへ神経痛がかたのさきから転宅して来た。
ブンブンが夜はマントルをこわしてしまったのでとりかえると、また一寸たってからとび込んで、自分も羽根をやいて少し毛のすりきれたジュータンの上に落ちた。
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「ホラみた事か、だからわるさは御やめにするがいいのに」
私は虫をにらみながらこんな事を云った。
けれども「女王さまのおおせで命にかけて
灯をあさるわしゃひとり虫」
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フット心の中で何ともつかないこんなものを考えたらみじめになった。
そのさきを考えようとしても出て来なかった。別な虫の三度目に飛び込んだ時にはほやをひび入らせてしまった。桃色のかさのかかったスッキリした形をしたスタンドをつ
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