の有る、若々しい朝は、立派な洗面器で顔を洗って、おしまいして坐布団の上にチョロンと坐るよりは小川の流れでかおを洗いグルグルまきにして紺の着物に赤いたすきで田草をとり草を刈り黒い土を耕す方がつり合って居て立派にちがいない」
[#ここで字下げ終わり]
 こんな事を考えながら小一時間もうき立った、この上もないうれしい気持でおどる様な足つきでブラついた。私の目にうつるすべてのもののそばにある木々の葉ずれも、空にある雲の走るのもみんなが私と同じたのしい歌をうたい、おどった足つきで居て、私が手をだしたら一緒におどって呉れはしまいかと思われるほど、私の心はたのしかった。家に入ると皆おきて居た。にこやかなおだやかな朝食をすませた。小さい弟[#中條《ちゅうじょう》英男、中條家三男]がすずめがおや鳥がひなにこうしてたべさせるんだと云って私に目をつぶらせて小さい細い白い箸の先にしこたまからしをぬりつけて口中にぬってくれた。私は、どんなに見っともないかっこうだろうと思いながらもくしゃみをし涙をながさないわけにはいかなかった。けれどもそれさえも私はこの上なくうれしかったのでくしゃみをして涙をながす間におなかをお
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