おらくは、平常の通り、お咲の食事の給仕をしていた。玉子をかけた一膳の御飯を、いつまでもかかって、舐《な》めるように食べている娘の前に、彼女は、ぼんやりと、坐っていた。引きつめた鬢《びん》が、めっきり薄くなったのや、淡い日差しが、淋しく漂っている頸元などを目に写るがままに見ていたおらくは、フト、お咲の懐から、何か繩のようなものが、三寸ほど下っているのを見つけた。
「オヤ! 何だろう?」
 それとなく、気をつけて見ていたおらくは、暫くすると、ほとんど気付かれないほど、顔色をかえた。彼女は、
「まあ髪が大層こわれたなあ……」
と云いながら立ち上った。そしてきわめて自然にお咲の後へ廻って、片手が髪に触るや否や、電光のような速さで、もう一方の手が、下っていた紐のようなものの端をつかんだ。
「アッ!」お咲は低い驚きの声をあげた。そして、それを渡すまいとして、母の手にすがった。が、おらくは全体の力をこめて、紐を手のうちに手繰《たぐ》り込んだ。
 二人は、全く無言で、奪い合った。暗い一かたまりが、あっちにゆれ、こっちに倒れながら部屋中を動き廻った。暫くして、動くのが止んだ。お咲の啜泣きが起った。とうと
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