りきりはなせないつながりをもっているように迫るのである。
 どうしても、アパート住居をしなければならないというのでもないのに、と二人は声を揃えて笑ったが、やがて友子はしんみりと、
「本当に誰かいいひと見つけたいわねえ、あなたと住むことの出来る。――そうすれば私たちも安心だのに」
 改めて、記憶の隅までをさぐり直す表情で、毛糸の玉をころがしつつ黙って編棒を動かしていたが、
「ちょっと!」
 坐り直すほど気ごんで、
「乙女さん、どうなのかしら」
「――東京にいるのかしら」
 軽々しくよろこぶには嬉しすぎる、そういう気持のあらわれた顔で、ひろ子は却って妙にうたがわしそうにゆっくり云った。
「田舎へかえっていたんでしょう?」
「もうかえってますよ、一つきいて見ようか」
「もし出来たら、いいわねえ」
「とにかくハガキ出してみましょう」
 乙女のなくなった良人は、ひろ子たち仲間の画家であった。その人がなくなった前後から乙女は特に友子たちに近づいて暮し、その友情に良人への愛着をもこめて、銀座辺の麻雀クラブのエレベータア係として働いて過す、気の張った、それでいて単調な毎日の張り合いにしていた。
 それ
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