る方法をそういう方向へさがし求めた。小さく燃えるものがあるような眼差しで、彼女は家を出るのであった。
バスを、自分のうちへかえる方角とは逆にのって、ひろ子は、友子のところへよった。たださえ立てつけの悪い古い家が、秋の大嵐ですっかり曲って、玄関の格子戸さえすらりとはあかなくなった。それだからこそこの一家族も熱心に家さがしをしているわけなのだが、門前の大きいアカシアだけが風情のある下でいくら格子をこじっても手におえないので、ひろ子は到頭声をあげた。
「友子さァーん、いるの?」
二階をいそいで降りて来る跫音がして、友子は、
「ほんとに、この家ったら!」
人間の子供でも叱るように真顔で云いながら、何かのこつ[#「こつ」に傍点]でむずかしいその格子を内からあけた。
「こないだなんか、私が出て、あとしめたらもうはいれないんだもの」
そのあたし[#「あたし」に傍点]という言葉に、この家の主人でさえ、という自然と腹の立った力のこめかたがあって、ひろ子は思わず笑い出した。
「どっかのかえり?」
「ふむ」
生活のすべてがわかっている親密な友達にひろ子は、自分の云いかたにこだわらない気安さで、
「
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