々を見せられると、
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あれがよくまあ平気で居られる。
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と思わないわけには行かない。
まるで、風土文物の異った封建時代の王国の様に、両家の子供をのぞいた外の者は、垣根一重を永劫崩れる事のない城壁の様にたのんで居ると云う風であった。
けれ共子供はほんとに寛大な公平なものだとよく思うが、親父さんに、
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「おい又行くんか。
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と云われても何でも、
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「ええそうなのよ、
父ちゃん。
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とか何とか実にスラスラと事を運んで、ケロッとした顔をして御飯に呼ばれるまでは遊んで行く。
大人もちょんびりでも心の隅にああ云う気持を持てたらさぞ愉快な事だろうと思われる。
普通の女同志のつき合の七面倒臭さに、同じ女ながら愛素をつかして居る私は、そう云う事を見ると、たまらなく羨しくなって来て、
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ああだったらなあ。
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とつい出て来るのである。
或る大変涼しい晩――もう秋の中頃がすぎて、フランネル一枚では風を引きそうな
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