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と真面目腐って云って居る。
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「ほんとうにそうなのよきっと。
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と、到々あきらめて仕舞ったと云って、子供の無邪気な一つ話になって居る。
事実は、単純な只それだけの事であるけれ共二人の子供の気持を考えると、話以上の面白さがある。
自分より小さい隣の児に対する弟の態度や何かがそろそろ男と云うものらしくなって来た事などに気付くと、頼もしい様な惜しい様な気になって、見なれた癖の中にいつも、新らしい事を発見したりするのは大抵そんな時であった。
いつも、家と裏の家との仲介者の様な位置にある弟は、段々育って来た批評眼で、まるで違った二つの人間の群を興味深く見て居たらしい。
最う此の上ないほど暑い八月の或る日、裏の主婦が、海水浴をする時用う様な水着一枚で、あけ放った座敷の真中に甲羅干しの亀の子の様に子供達とゾックリ背中を並べてねて居たのなどを見て来ると、弟はむきになって、あんまりだらしがないとか、見っともないとか云っていやがった。
一体此処いら界隈が学者町で、相当に落つきのある生活をして居る人が多く、したがって、それ等の人
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