んかの拍子に眼玉を突つかれたなり、生れもつかない目っかちになったと云う大事変が孝ちゃんの家中を仰天させてしまった。
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「入目をさせて、眼鏡を掛けりゃ一寸ごまかせますよ。
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などと戯談を云って居たが、その事があって間もない時孝ちゃんの妹が家に遊びに来た。
 上の弟は、鳥にお菜をやりながら云い出した。
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「君んとこの鶏が突つかれたって。
「ええそうなのよ。
「どれがつついたの。
「兄さんの。
「兄さんのって、どれ?
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 小さい娘は、すかして見ようとして垣根際によって行ったけれ共分らなかったと見えて、
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「黄色い様な肥ったの。
 兄さんの鳥はひどい事ばっかりするんですもの、
 私いやんなっちゃうわ。
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と云って、年頃の娘でもする様に袂の先を高くあげて首をまげて居る。
 何か考えて居ると見えて、薄い髭の罪のなく生えた口元をゆるめてニヤツイて居た弟は、
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「めっかちになったんじゃ困るやね。
 あのね、今先[#「先」に「(ママ)」の注記]ぐ
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