動するのに。――素子にかまわず伸子は仕度を終り、もう一度、
「来て頂戴ね」
そういって、保のいる座敷へ戻った。
素子は、決心のつかない表情で伸子が出かける玄関口まで来たが、とうとう来なかった。
伸子は、保に鵞鳥も見せたいと思い、おととい通った道順そっくりに、白い小花の咲いている灌木の茂みのところを行った。
「いる! いる!」
伸子はよろこんで、
「ほら、いるでしょう」
ときょうもなきたてる鵞鳥の群を見せた。
「七面鳥は桜山でも飼っているけれど、鵞鳥って珍しい」
夏休みに行く田舎の家のある村の名をいって、保は伸子と道ばたに並んで鵞鳥を見た。保が、柵の外の道からポンポンと手をうって歩くと、鵞鳥はしばらくそれに平行に歩いて来た。
「お留守でなくて、よかった」
温室の外で働いている竹村の姿が目に入ったとき、伸子はわざわざ来た保のために在宅をよろこんだ。保は、研究的に、土の混ぜあわせ方の比率だの、温度だのについて竹村にききながら、カーネーションの間をゆっくり歩いている。竹村の、年の割に枯れた皮膚の、眉間に大きい縦皺をもつ顔は、温室に花を育てる人として自然に見られた。けれども、上まぶた
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