たままつい話しこみかけている細君に、
「おい、お茶をいれろ」
 竹村がそう命じた。その声は乾いていて、濃い眉の下で眼がけわしくひらめいた。体裁でつくろいきれないそそけだった夫婦の気分で、伸子は、なぜ素子が自分をつれてここを訪ねたのか、いづらかった。そのとき、竹村は和服を着ていた。伸子の目には、二月堂の卓と趣味の上で一つのつながりがあるように見える変った織の和服をきて、陶器のパイプを本のわきにおいて眉をひきしめていた。
 アトリエのような気分のある、からりとして未完成なこの建物の土間であっち向きにしゃがみ、七輪に火をおこしている竹村は、ひじのぬけかかった鼠色のジャケツを着て、テニス靴をはいている。眉の間に深く刻まれている二本の縦皺はもとのとおりだが、あの暗い座敷にじっと坐っていた竹村を思い出すと、生活の変化がおどろかれた。あの細君を離婚しなくては、竹村のこういう生活の変化もおこりようがなかったのだろうか。庭木の奥の洞穴のような離れで営まれていた生活も、細君が、そうしつらえたというより、はじめは確かに竹村が自分の趣味で、あの座敷も選び、渋いという風なあの雰囲気をつくって行ったのだろうのに、
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