、竹村は温室の戸をあけた。素子が入り、伸子も内部へ踏みこんで、思わず、
「まあ!」
 声をあげた。一日じゅう日光の最後のぬくもりまで利用するように建てられている温室は、その時刻に丁度真向うから西日をうけていた。ガラスのまぶしい反射のために外からは見えなかったカーネーションの花の赤、白、ピンク、淡いクリームの色々が、入ってみれば温室いっぱいに咲き乱れている。しめりけのある温い空気は、粉っぽいカーネーションの薫りで満ち、近よって眺めると、見事な花冠をつけた茎のほそくつよく節だった緑の美しさ、やわらかな弾力にあふれてはね巻いている細葉の白っぽいような青さ。外気の荒さに痛められず、伸びて、繁って繚乱と咲いているカーネーションの花弁は美しくて、伸子はそこをかきわけるように入って行った人間たちの衣服の繊維のあらいこわさを、花々にふさわしくないものにさえ感じた。
「ひといろの花ばかりでいっぱいの温室って……はじめてだわ。気が遠くなるみたい」
 温室はそう大きくないのに、同じ花ばかり見てひとまわりすると、そこは限りなく奥深い広いところに思えた。伸子は、薫りに酔ってうるんだ眼になった。
 反対側を竹村と
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