心のうちでは、自分の書く小説のことであり、小説を書いてゆく、というそのことでもあった。
しばらくして竹村が、
「むずかしいもんさね」
緊張した空気をほごすように、座蒲団の上で胸をひろげて、のびをするようにしながらいった。
「考えてもきりがないようなもんだし、うちの奴みたいに、てん[#「てん」に傍点]から考えない女も、つきあえたものじゃなし……」
立ち上って、竹村は、
「ところで、きょうは、ひっぱり出しに来たんだ。――ひとつ出かけませんか」
と、伸子を見た。
「どこへ?」
「温室を見せようっていうんです」
去年、細君を離別した竹村は、駒沢の、伸子たちの住んでいる分譲地よりずっと奥に、一人暮しで園芸をはじめていた。
「いま、カーネーションが素晴らしいところなんだ、ね、――行こう」
「いまっからじゃあ……」
素子が、決断のつかないおももちになって、竹村の住んでいるところとの往復の距離をはかるように庭を見た。
「かえりは送って来るよ、宵の口はひまがあるんだ。この頃の気候だと夜中にボイラーをたくだけでいいんだから」
「――ぶこちゃん、どうする?」
「私は行ってもいいけれど……」
「じゃ
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