一寸……」
あとは、はなれた椅子にかけている伸子にきこえない打ちあわせになった。深いひじかけ椅子に背をもたせかけて、鼻眼鏡の顔をあおむかせ気味に何かいう藤堂駿平の方にこごみかかって、
「はァ」
とか、
「それは出来ますでしょう」
とか簡単に答えながら、秘書はそれとなく眼を動かして、ちょいちょい伸子の方を見た。
「じゃ」
「…………」
秘書が一礼して出て行くと、藤堂駿平は、
「お嬢さん、明後日あたりでも、大使館へいらっしゃい、わかるようにしておくから」
といった。そして、膝の前におかれている小卓の箱から葉巻を出して、その先をきり、火をつけ、くゆらしながら、一層深く椅子の背にもたれこんで、
「日本の婦人たちも、どしどし外国へでもどこへでも行くようになってくれなくちゃ仕様がありませんな」
と云った。
「三浦環なんかにたいして、どういうものか日本人は冷淡だ、悪口をいう奴さえある。あなたも広いところをみて、しっかり面白い小説をかいて下さい」
いつか伸子に反物をおくってくれた老母は、じき喜の字の祝いで別荘に暮している。そんな話もあって、泰造と伸子とは四五十分で藤堂駿平の邸を出た。
「どうもあ
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