のおじさんを囲んだ。しかし、少女たちはそこに立ったまますぐたべたりしないで、行儀よく、おでんを買った皿や小鉢をもって、また建物の中へ戻って行った。伸子が、子供だったころは、その工場のビンを一杯並べた仕事場の入口に佇んでながいこと見物していても格別おこられもしなかった。インクが紺色だから、そこで働く小さい女工たちも肩上げのきものに紺の前かけをさせられているにちがいない。
 外国へ行こうとしている伸子の心には、見なれたその通りの夕暮の光景や、ゆきちがう小さな女工たちの姿が永年見なれている界隈の生活だけに印象ぶかく迫った。
 その通りをもっと広い大通りへ出た角に交番と赤いポストがあり、佐々の家は、じきそのはす向いの奥だった。伸子がもうすこしで大通りへ出きろうとしたとき、まだ見えていない佐々の家の門のところで、きき覚えのある自動車のクラクソンが鳴った。それをききつけて、伸子はちょっとうれしそうに眼をうごかした。よかった、丁度父も帰って来たところだ。そう思って、もう車が入ってしまった門の道を行った。
 つきあたりの玄関のところに、三四人の人の姿が見え、混雑している。伸子は、遠目にそれを見て、はっ
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