の古箱を床の間の地袋からもち出して、なかみを机の上にひっくりかえしはじめた。伸子は縁側の椅子のところからその様子を眺めていた。素子は、
「丁度っていうのはないもんだな、これは小さすぎるし」
 書類につけて出す写真は寸法もきまっているのであった。伸子は、妙に力のこもった眼つきをして素子が素人写真をいじっている様子を見まもっていたが、やがて、少しつばのたまったような声になって、
「――あたらしくとったら?」
 そういいながら椅子を立って、机のわきへ来た。
「新しくとりましょうよ、かわりばんこに……」
 ばつがわるそうにそう言って伸子はちらりと亢奮した笑顔をした。
「わたしもいるから……」
 素子は、それをきくとさっと顔をあからめた。
「なんだ! ぶこちゃん!」
 そして、たしかめるように、じろじろと伸子を見まわした。
「ほんとかい?」
 伸子は、こっくりとした。
「どうしたのさ――動機ってやつは――」
 灰色表紙の一冊の厚い本は、伸子がこれまで知らずにいたどっさりのことを教えた。自分の様々の疑問がこの日本の社会の中にもっている環境と関係したものであるという性質が、おぼろげに輪郭づけられた。
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