からない題でもあった。伸子は、頁のところどころをあけてみながら、のろのろと、二人の坐っているところへ戻った。そして、ウメ子にその本をわたした。ウメ子は、落ちついて順序よく目次をよみ、いくらかの頁をめくった。ウメ子は、だまってそのハトロン紙でカヴァーをつけられた本を畳においた。その本の目次や、書かれている文章のところどころには、伸子がよみなれて来た本にない何か新鮮な、鋭いつっこんだ調子が感じられた。そこにある美しさが感じられた。伸子は手をのばしてウメ子のわきからまたその本をとりあげた。
「面白い?」
「おもしろい」
素子ははっきりうなずいた。
「ずるいなあ」
伸子はほんとにそう思って云った。
「いつ買ったのよ」
「二三日前さ」
二三日前と云えば、白い浴衣の男が不意に柘榴の樹かげから縁先にあらわれた日の、すぐあとのことである。素子は、また顎をなで上げるようにしながら、
「北條一雄の本ていうのも見ましたがね、どうもこっちの方がいいらしいから、こっちにした」
「ずるいなあ」
伸子はまたそう云った。
「わたしが、とじこもって、あれこれ考えてるまに……」
「いくらわたしだって、まさか、何一
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