しい上まぶたの表情と長いまつ毛をもったウメ子は、糊のきいた素子の伝法な柄の浴衣の中で、
「どういうんでしょうか」
 ほっそりした首をすくめるようにして、素子の方を見かえした。素子は、黙っている。三人の前に、ウメ子のお土産だったアイスクリームをたべたガラス皿があった。
「河野さん、あなたは、ああいうものおわかりになる?」
 ウメ子は目立たない勉強家で、いつとなく専攻の英文学のほかに、チェホフの作品などを原語でよむようになっていた。小説のことでは伸子も間接に影響をうけている須田猶吉に親炙《しんしゃ》して、婦人の作家に珍しく装ったところのない作風を認められていた。
「わたし、いつもなまけてばかりいてわるいんですけれど、あんまりああいうものは読まないんです」
 ウメ子は、ちらりと奥にある小さい金歯をのぞかせながら笑って、美しい上まぶたをつり上げるようにした。
 伸子には、篠原蔵人の論文にあるように、リアリズムという文学の上の傾向にも階級の区別があって、ブルジョア・リアリズム、プロレタリア・リアリズムとわけられなければならないということが、よくのみこめなかった。「アンナ・カレーニナ」のなかで、ア
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