誤解がおこるのよ。外国の文学史をみたって、そうだわ。愛人の詮議がよくおこるでしょう。――失礼だけれど、第三者からいえば、あなたのように、自分をその立場に当てはめて考えている女のひとが、ほかに幾人もあるかもしれないのよ」
「それゃ、事情を知らない方は、そうもお思いになりますでしょう、でも――私の場合はちがうんです」
「日本の女のひとは、外国の男が何でもない習慣ですることを、特別の関心と思いちがいして、かわいそうなことになるでしょう。――相川良之介というひとは、最も辛辣なことをいっても女のひとは愛の告白かと思いちがえるかもしれないぐらいのところがあったのよ」
「ええ、それもわかっています。でも私の場合はちがいます」
 そして絢子は、その言葉で伸子の顔をぶちでもするように、
「相川良之介さんは、私に接吻したんです」
といった。
「あのおうちの二階からおりようとしていたとき、階子段のところで……」
 伸子は、ぞっとした。そして、黙った。ペンをもつ手がふるえ、涎がたれるようになったと自分について書いている相川良之介を思った。二階へ急にかけ上って来た夫人が、となりの部屋の畳につっぷして、お父さんが
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