機微に属することをきいたりするのかと伸子は怪しんだ。
「どうして、わたしが知っているの?」
「だってさ――いずれ文学に関係をもっている女のひとだろうからさ」
「知らない」
 伸子は、いとわしそうに眉根をくもらして首をふった。
「相川良之介のようなひとが一緒に死のうとまで思ったくらいなら、おそらく、よっぽど魅力のある女のひとだったんだろうねえ」
 それらの言葉から母の関心の焦点がのみこめた。
「相川さんの細君というひとは、いずれ平凡なひとなんだろう?」
 ――またはじまった! 心のうちで叫ぶように感じ、伸子は出窓にかけていたからだを思わずおこした。あんまりいやな気持がした。
「そういう比較はするもんじゃないわよ。誰が知っているの? そんなこと!」
 漠然と語られている女人の方に魅力があって、細君の方は平凡なひとだと勝手にきめてかかる、そのいやしさは伸子の胸をしぼった。越智の若い妻についてもいつか多計代はなんといっただろう。自分と、どう比較しただろう。相川夫人についていまいっている、そっくりそのままをいった。その後、越智とのいきさつがああいう風に結末しても、多計代がそこから学んだのはただ越
前へ 次へ
全402ページ中287ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング