ていい?」
ときいた。
「あんまりくたびれたから……」
 多計代は、すこしびっくりして、
「さあ、さあ、おねなさいとも。――でも大丈夫なのかい、ただねるだけで」
「いいの、いいの」
 青桐の葉ごしの光線でその座敷にしかれた蒲団のシーツの白さが緑に光るようなところで、伸子は、団扇を顔の上において、本当にすこし眠った。

 となりの室で多計代が何かいっている声で伸子は、目をさました。
「なるたけもって行くまいよ、ね、きりがありゃしないもの」
 つや子の学校も夏休みになり、近日中に、東北の田舎の家へ出かける、その仕度であった。
 伸子は、真夏のひるねからさめた新鮮な顔つきでそこへ出て行った。
「いつお立ち?」
「四五日うちには立たなくちゃなるまい」
「ことしは誰が行くの」
「さあ……ともかくわたしは出かけるよ、またあせも[#「あせも」に傍点]がこわいから」
 多計代は糖尿病をもっていた。あせも[#「あせも」に傍点]がよって、悪化して、大変苦しんだことがあった。それから、夏の間は東京にいないことになっているのだった。
「お父様はだめ?」
「それゃ、一寸はおいでになるだろうけれどね、例のとおり忙
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