かっている。それは好人物の印象であった。
 二階の書斎兼客間に通された伸子はそこにある一つ一つのものに興味を動かされた。その部屋の一隅に大きい茶色の書きもの机が置いてあった。その机は、伸子が本の插画の古い銅版画で見ているプーシュキンの書斎にあった机のような型で、グリグリのついた足と、いくつもの小引出しとをもって、いかにもロシアの古机であった。壁に、海洋を描いた画家として有名であったアイバゾフスキーの嵐の夜の海の写真版がかかっている。反対のもっと光線のすくない方の壁に、この間うち開かれていた現代ロシア美術展のとき売っていた赤いサラファンを着た太った若い女の絵の色刷りがはってある。それがロシアの復活祭のとき飾る色つけ玉子を真似したおもちゃだという、こまかい朱うるしで絵をかいた玉子形の飾りが本箱の上にあるのを見て、伸子は、
「持って拝見してもいいかしら」
 そっととりあげて眺めた。日本のうるしの細工とまるでちがう手法で、赤い玉子のおなかにまた楕円形の灰色の地があって、そこに橇遊びをしている冬の湖上の風景がミニェチュア風に描かれている。
「だから来てよかったじゃないか、ぶこちゃん」
 素子が本
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