のだから。――もっときついシュッ! と泡の立つような話。保がどうしてもむき出しに自分の感情の底をわらずにはいられなくなるような、そういう人生の話。伸子はそれを求めた。保の人間性の根っこをつかまえて、その上皮にはりめぐらされたあいまいなものをひといきに破ってしまう、そういうものこそ保に必要なのだ。
なにが、そういう種類のことがらだろう。伸子は、自分たちの生活のぐるりからそれを見出そうとするしかなかった。越智と母との普通でない交渉。それについて保と自分とでしゃべる勇気は伸子になかった。それならば、きょうのように、美しい小枝を中心に兄が見せた一種の雰囲気を、弟であり、女の子の友達のない保がどう思ってみたか。伸子にはいうまでもなく保の微妙な心もちが映っていた。和一郎が保と正反対の飄然さをつよくあらわしはじめて、余りうちで暮さないようになったのは、弟である保から感じる圧迫感の反射だということを、保が知ったとして、保がどうなろう。――
客間のなかはすっかり薄暗くなった。青葉はずれの鈍い光が、四角い紫檀の卓の一角と、白い支那焼の灰皿のふちを細く光らせているばかりで、奥の椅子にふかくかけている保の
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