、そんなに永劫不変な型に入った絶対のものがあり得る? 生活は絶えず動いているのに……あとからあとから新しい条件が出来て来るのに――。いいことっていったって、それは、わるいとわかっていることを否定したり、それをなくしようとして闘ってゆく、そこに生れるんじゃない? いつだって、そうだわ、実際は。……」
 自分がそういったことで、伸子自身にも一層現実がはっきりした。本当に! いつだってそうだ。いいことは、わるいこととのたたかいの間につくられて来るのだ。
「まちがった力をどけなけれゃいいことはあり得ないとしたら、なんで正しさを防衛するの? 右の頬っぺたをぶたれたら、左の頬っぺたまで出す? わたしはいやよ。保さんは?」
「そういう場合なら、僕だって出さないと思う」
「でしょう? だもの……」
 しかし、保は内心で、そうでない場合もある、とがんこに考えているのだ。それが伸子によくわかった。
 こうして何かいっていればいるほど、保の不思議に抽象してものを考える癖につきあっているようで、伸子はますます落着けなくなった。伸子がその考えかたを否定していうにしろ、つまりはそれも抽象的な話であることはおなじな
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