うことは納得出来なかった。労働者の娘でなく、食うに困らないからといって、伸子は自分が人間としてよく生きようとしている意志をその人々の前に憚《はばか》ったり、はじたりしなければならないとは思えないのであった。
紫メリンスの前かけをしめて、考えこんでいた伸子は、上りがまちに腰かけたまま、うしろの襖が細目にあけられたのに気づかなかった。急にそこがひろくあいて、
「ぶこちゃん!」
不安にされたような素子の声で、伸子はかえってぎょっとした。
「どうした?」
伸子は首だけあおむけ、
「どうもしない」
といった。
「帰ったんだろう?」
「帰った」
「ぶこちゃん、なかなかいいたんかきったじゃないか」
その言葉は伸子にたいへん意外な感じを与えた。
「――たんかなんかにきこえた?」
「そういうわけじゃないけどさ。――生意気じゃないか、ひとのうちへ来て脅かすような声なんか出しやがって――」
「あのひとたちにすれば、はじめっから、たのみに来たんじゃないんだろうから……」
二人は縁側に出してある籐椅子のところへ戻った。
「あれでいいのさ。よすぎるぐらいだ。くせになってしようがありゃしない」
素子と伸
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