た。社会にある貧富の差についても、伸子は多計代のようにそれを当然なことと思えなかった。それかといって、今帰って行ったアナーキストといわれる人たちのように、ただ一つのものでも、あるところから無いところへ移し、掠奪したところで、すぐそのあとから無限に貧富の差を生み出してゆく今の社会の仕組みそのものがよくなろうとは思えない。伸子は、どっちにも荷担出来ない自分の心を感じた。どっちにも荷担できない心は、これらの二つの態度よりも何かもうすこし、しゃんとして、見とおしのある方法があるのではなかろうかと思う心持に通じた。こういう心もちの自分のようなもののところへまでリャクが来たということは、伸子に、つじつまのあわない、漠然とした苦しさと馬鹿らしさを感じさせるのであった。
 伸子は、これまで自分について常にいわれて来ている一つの悪口を思い出した。それは伸子が食うに困ったことがなく、貧乏の味を知らないということであった。あの三人の青年たちも、よりよりそんな噂をして、一つ行ってやれ、という風にして来たのだったかもしれない。
 日ごろ伸子は、自分につきもののようなそういう悪口に余り拘泥しなかった。食うに困らず
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