のところへ、寄附金を要求してゆくことが流行していることも知っていた。近年新しく小説をかき出している若い婦人作家がアナーキスト仲間の生活を描いている作品で、そういうことをよんだ覚えがあった。
「わたし出てみる」
 伸子が玄関へ出て行ってみると、たたきのところにとよのいったとおり三人の若い男たちが突立っていた。どのひとの髪もぼうぼうとのびっぱなしで、じじむさいのをてらいの一つにしている高校生のようにきたなかった。どのひとものどのところで丸くエリの立った茶色だの黒だののルバーシカを着て、よごれ古びたズボンに下駄や靴やまちまちの足もとである。一人は太いステッキをついていて、それが先頭に立っていた。
 伸子は、
「わたし、佐々伸子ですが――御用?」
 そうきいた。
 いく日も風呂に入らないでよごれたままの顔、おそらく、朝まともに顔も洗わないで出て来たらしい三つの青年の顔が、六つの眼を紫メリンスの前かけ姿でそこに現われた伸子の上にすえた。誰一人挨拶の頭を下げず、荒っぽそうに、いかつそうに粗暴であるが、その眼のなかや口のはたにおさえきれない若者らしさや好奇心が浮んでいる。こういう若いよごれ、手荒さは
前へ 次へ
全402ページ中177ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング