られず、そのもの堅さは、逆に、若かった多計代が恋愛の道をとおらずに経験した結婚の門出が、若い娘にとってどんなに溢れる情感から溶け入ったおのずからのものでなかったかを語っているのではなかろうか。その意味で、多計代がやかましくいう純潔の裏がえされた面には、暗闇で息をのみ眼を大きく見開いているような女の経験があるのではなかろうか。
 いつだったか、父と母との結婚記念写真が出て来たことがあった。三十歳を越したばかりで髭を立ててフロック・コートを着て立っている白面のおとなしい泰造の横前に、房つきビロードの丸椅子にかけて島田に結った多計代がいる。写真には白っぽく写っている立派な衣裳の二枚重ねに、黒ちりめんの羽織を着て、膝にあげた片方の袂のなかに片手をかくしてうつされている。その花嫁の眉つき、レンズに向けられているまなざし、紅をさした口もとの締り工合、どこにも羞らいやうれしさがなかった。陰気で、けわしくさえ見えた。伸子は、しげしげと眺めながら、
「このお母様は、あとの写真ほど美人じゃないわ、なぜかしら」
といった。全く、それから小一年たったあと、浴衣で、夜会巻でとっている多計代の七分身の写真には、に
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