女としての自分を買いかぶって、自分に対する場合だけはいつも例外で、その男にいたずら心や浮気のない深刻なことのように思うとすれば、それはうぬぼれでなくて何だろう。ある婦人の良人である男と妻である自分の間に、感情の逸脱があっても、それは自分が自分である限り高貴な悩みなのだと思っているとすれば、思いあがりでなくて何だろう。
 理づめに糺弾に傾いて行った伸子のこころもちは、やがて、一つの矛盾の裂けめを覗きこんだ。それは、男女の間の純潔ということが、多計代のこころの中では、肉体の交渉の有無にばかり重点を置かれている、ということであった。だから、あんなに純潔好きの多計代に、おどろくような矛盾として、越智との感情交渉がなりたった。その感情に肉体的な表現がもとめられて、はじめて、多計代には、純潔感がめざめ、女の警戒が覚醒している。伸子の、庭を眺めて眩しそうに細めているまぶたの上に悲しみとおどろきの色がさした。きのう多計代が結婚という言葉をいったとき、その言葉から射すひとすじの光もなかったわけがわかった。多計代の人生にとって、肉体的な意味での男女の性的交渉は、必ず結婚という手続を通ったものでなくては認め
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