はくらべて見るがいいんだ」
「恩にきせるなんて――卑怯ですよ」
「俺が卑怯かどうか、伸子にきいてみろ」
「ほら、とうとうあなたの、伸子にきいてみろ、が出た!」
 多計代は涙をうかべながら、かちほこった、刺すような笑いかたをした。
「ひとがいるといつだってそうなんだ、あなたってかたは。――虚勢をはって――」
「いいかげんにしろ!」
 ねていた泰造が長椅子の上でおき上った。
「自分の娘をひと[#「ひと」に傍点]っていう奴がどこにあるものか。――いったいなにが不平でそう悪態をつきたいんだ。何不自由なく食わせてやっているくせに。――したいだけの我ままだってしているじゃないか」
 多計代の頬を涙が光ってころがり落ちた。
「何不自由なく食べているのが、そんなにお気にいらないんなら、私はどうでもしましょう。……さぞあなた一人で、ここまでになすった家なんでしょうから」
 袂からふところ紙を出して、多計代は涙をおさえた。少しふるえるその手の中指に見事なダイアモンドの指環がきらめき、煖炉棚の上におかれた振子時計が、ガラス・ケースの中で一本の金線につられた金色の振子を音なくまわし、部屋にひろがった静寂の深さ
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