くしてあげてね」
とお給仕に念をおした。
 幼いつや子が食堂から去ると、泰造、多計代、伸子の間に、さっきからつづいた気分がかえって来た。伸子は大テーブルの上のすこし離れた場所で夕刊をひろげていた。泰造は、煖炉わきのつくりつけの長椅子に、クッションを枕にして横になっている。多計代はいつもの、入口から正面の席で、薄い藤紫の地にすがぬいのある半襟のよくうつる顔をまっすぐに、いくらか胸をはるように坐っている。坐っている爪先が白い生きもののように落着きなく動いていることは、多計代の繁いまばたきの工合でしれた。
 しばらくそうしていて、やがて多計代がその沈黙にたえられなくなったように、
「お父様」
 さ、ま、というところに力を入れて泰造を呼んだ。
「なんだ」
「寺島の地所のこと、してくださいましたか?」
「まだだ」
「――困るじゃありませんか」
 伸子は、自分に向けられた母の視線を感じた。が夕刊から目を動かさなかった。両親の心持のもつれが、こういうところに話題をとらえて、しかも母の方から挑むようにもち出されたことは、伸子に思いがけなかった。
「あしたですよ、期限が」
 寺島に、母の実家があった。祖
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