・グラス》の窓を思った。その硝子は、食堂で父がどなった背後の煖炉わきの高い小窓にはめこまれているのであった。
 スリッパで廊下を来る足音がした。きぬずれの音がした。伸子は、椅子から立ち、水道の栓をひねって、手を洗いだした。そこへ多計代が入って来た。
「おや、いたの」
 多計代は伸子の肩の一端が映っている鏡に向って一寸自分を眺め、やがてセルロイドの盆から櫛をとりあげて、格別みだれていないいつもの大きくふっさりした庇髪をかきつけた。
「お父様はあれだから困ってしまう、すぐ真っ暗になって……」
 越智は帰ったことが、多計代の話す調子でそれと察しられた。
「あの有様じゃ、何ごとかと思うじゃないか」
「…………」
 伸子は黙っていた。多計代も、伸子がさっき涙をふきにここへ来たように、きもちをしずめるために洗面所に入って来たにちがいなかった。
 鏡に向って上目で前髪の毛すじをととのえながら、多計代はいくらか弁解のように、
「お父様ったら、愚弄したとか何とかって――おっしゃることがどうしていつもああ極端なんだろう。――こないだ越智さんが一緒に夕飯をたべて、あとでいろんな話が出たんだけれど、何しろお父
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