快さや、こういう腹立ちの爆発のしかたに同情がもてた。みっともないと思えなかった。理づめな物言いの出来ない父、そして、面と向った対人関係では気のよわい父には、せっぱつまるとこういう爆発をするしかない気質がある。伸子にそれがよくわかった。
 伸子は、そっと立って、洗面所へ行った。ハンカチーフで涙を拭いたあとの顔を、そこの壁につけてある鏡にうつした。人の心のなごまるようにと、この家の門の石じきには花の形がちりばめてあるのに。――
 流しの前に、木の椅子がおいてある。ひっくりかえすと踏台になる椅子だった。伸子が小さかった時から、その椅子はそこにある。伸子はニスのはげかかっているその上にかけた。こういう風にして、母がかけていて、そのわきに娘の伸子が立っていたことがよくあった。夜中に母が何か父と衝突して、涙をこぼしながら下りて来てここにかけていたとき。また、もっと小さかった伸子が、錦輝館の泰西大名画という映画につれて行って貰おうとして、ともかく身じまいをはじめて母の気がきまるのを、辛抱しながらこの椅子にかけている母の横に立って待っていたとき。いま伸子は、ふと一つのことを想い出した。
 何年か前、知
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