二つの型
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)側《かたわ》ら
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ついぞ[#「ついぞ」に傍点]発見し得ない。
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服装に就いての趣味と云っても、私は着物の通人ではないから、あれがいいとか、こんな色合は悪いとかは云えない。要するに着ているそのひとに合っていればいい。種々変った型、色、等があって差し支えないということは、恰も同一の個性が人間の中に見出されないのと同じわけではないか。唯、この際、自分にあてはまったものが、そう簡単に易々と見附かるかどうかと云うことは云える。そのために衣裳好みということが起るのであるならばさし支えないが、徒らに高価なものを身に附けたりして通がったりするのは、却ってその人を落すだけである。
京都へ行く度びに私がよく思うことは、京都の女は、凡てが季節などに支配されているということである。セルの季節になると、一様にセル物の姿が見られる。同じ様な意味で、縞柄とか模様、色彩などがなんとなく同一傾向のものであって、東京の電車の中で見る様な、突飛な服装をしているものはつい
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